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印象に残ったこと
経理関係者でない人が簿記(決算書を作る技術)をマスターする必要はない。簿記1級を取得すれば決算書を作ることはできるようにはなるが、決算書を解読し、経営に活かせるようにはならない。
会計とは商売の活動をお金に置き換えて記録し、その結果を伝える手段。
収益は売上、利益は売上と費用の差額。利益はお金ではなく生成した価値。
「事業年度という暴君から自らを解放しない限り、合理的な事業のマネジメントは行えない。」byピーター・ドラッカー。
営業担当が得意先に商品を売り込んだり、広告を出したりしてもその努力がその会計期間の成果に現れるかわからない。価値を消費しても価値が増加するとは限らない。
「コストの90%は業績(利益)を生まない90%から発生する。業績とコストは関係ない。」=使われた価値の90%は全体の10%の利益しか生まない。byピーター・ドラッカー
ピーター・ドラッカーが損益計算書は化粧できると語っているが、当期費用を次期に先送りしたり、次期の売上を当期に先取りしたりすることで期間利益は増える。そこで会計検査ではカットオフが行われる。
営業利益率が低い=販売や管理に無駄が多い。
全国展開している高級メガネチェーンは売上高総利益率が68%もあるのに、営業利益率が2%。理由は直営店の人件費や賃借料が多いこと。資本金・資本剰余金は会社のオーナーである株主が会社に払い込んだお金。利益剰余金は会社が貯めてきた税引き後当期純利益の累計額で内部留保と言われる。
仕入代金にはごくわずかだが利息が上乗せされている。
倉庫に積み上げられた商品はお金だが、会計のテキストではその古い商品の金額をどうするかばかりが書かれている。(数年前に100万円で仕入れたものの在庫金額は100万円でいいか?時価にすべきか?)
たくさん買ってくれれば値段を下げると言われて多めに買うバイヤーが多い。
流動比率は鵜呑みにできない。流動資産の中にはなかなか回収できない売掛金や売れる見通しのない商品在庫が含まれている。これらが多いと運転資本は多くなって、流動比率は高くなるが現金は入金されない。
流動比率が高く売掛金と在庫金額が多い会社ほど短期の安全性に問題がある。固定資産は自己資本+固定負債以下にしないといけない。
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100は100%以下でないといけない。自己資本に対して何倍の資本を運用したかを示す指標が財務レバレッジ。財務レバレッジ=総資本(自己資本+他人資本)÷自己資本。
ROA=税引き後当期純利益(P)÷総資産(A)。ROAを分析する目的は調達したお金をどのように運用してどれだけの利益をもたらしたかを突き止めること。損益計算書だけでは効率的な経営を行っているかはわからない。
ROAが極端に低い会社の経営者は投資の失敗を認めたくないのか現金を生まない固定資産を手放そうとはしない。思い切ってお金を生まない固定資産を処分して新しい機械に変えることを検討しないと、従業員がいくら頑張っても業績は上向かない。
ROE=税引き後当期純利益÷自己資本=ROA×財務レバレッジ。ROEを高めるにはROAを高めて、財務レバレッジを増やせばいい。
借金を増やせばROEが高くなる。借金が利益を生んでいるうちはいいが、利益が出なかったり、失敗してROAが低下し始めたら危険。
最も効果的にROEを高めるには自社株を買うこと。(マクドナルドやヒルトンは借金して自社株買いをして負債が資産を上回る債務超過になることがあった。)
コロナ禍では株主のためにROEを重視しすぎて、財務体質を犠牲にしてきた会社が窮地に陥っている。一番粉飾しやすい決算書は損益計算書。利益は意見、されど現金は現実。
1ヶ月の売上と仕入代金、人件費、家賃、電気代などの収支差額が営業キャッシュフロー。冷蔵庫、ガスレンジ、テーブルの購入に使った現金支出、固定資産を売却した現金収入が投資キャッシュフロー。株主が振り込んだ資本金や銀行からの借入と返済や配当金支払いが財務キャッシュフロー。
減価償却の自己金融機能。減価償却によって固定資産の購入に使った現金を、それに使用する期間の売上から回収できる。実際の利益より減価償却費分、現金収支差額が多くなる。
キャッシュフロー計算書は現金収支の総額から現金増減額を計算する直接法と貸借対照表の現金以外の資産、負債、資本の増減から現金の増減を求める間接法がある。会社は間接法を使う。
現金以外の資産の減少は現金の増加をもたらす。負債、資本の増加は現金の増加をもたらす。
営業CF→利益剰余金の増減と固定資産の減少(減価償却費)と運転資本(商品+売掛金ー買掛金)の増減
投資CF→固定資産の増減
財務CF→有利子負債(借入金)と資本の増減営業キャッシュフロー(間接法)=税引き後当期純利益+減価償却費ー運転資本(商品+売掛金-買掛金)の増加額。商品や売掛金が増えると現金は減る。買掛金が増えると現金が増える。ただし、買掛金が多いことがいいと言えるのは利益が出ていて、売上債権が順調に回収されている必要がある。アップルは利益率が高く、売掛金と商品が少ないが買掛金は多い。買掛金が多くて済むのは受注生産で在庫がない上、ドコモ、KDDI、ソフトバンクといった業者から商品販売前に売上代金の一部を回収しているから。
「事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。今日の利益のために明日を犠牲にする。売りやすい製品に力を入れ、明日のための製品をないがしろにする。言い換えるならば、最も稚拙なマネジメントを行うように仕向けられる。」byピーター・ドラッカー
「企業は十分なキャッシュフローさえあれば利益が出なくとも、長い間なんとかやっていける」byピーター・ドラッカー
ポストコロナ時代に売上と利益ばかりに関心を持っているのではビジネスパーソンは務まらない。
財務キャッシュフローは借金の返済、配当支払い、自己株を買う。
利益は将来のリスクや特別な支出の備えであって、決して余剰ではない。したがって現金が増えたからといって使い切ってはいけない。
アクルーアル(会計発生高)=特別損益を除いた税引き後当期純利益ー営業CF=運転資本の増加額ー減価償却費。アクルーアルがマイナスとなる企業は現金の裏付けのある質の高い利益を生成している。
投資キャッシュフローは通常はマイナスでありプラスだと要注意。
売上が低調で売れ残り商品が増えているのに売掛金が増えていると利益の質は悪い。
資産がなければ利益は生まれない。
商品の粗利益率が高いほど現金を稼ぐ力は強い。
雑感
日商簿記3級に合格しているボキは貸借対照表と損益計算書のくだりはさらっといけましたが、キャッシュフロー計算書は結構読むのがきつかったです・・・。
バイト先の管理職と在庫について話した時があったのだが、まさに在庫の評価の仕方を語っていて、机上の数字だからいくらでもいじれると言っていた。
その在庫評価の仕方が日商簿記1級の範囲だった。
しかし、この本の冒頭に書いてあるように、簿記は経理関係でない限り資格で取る必要はないかなと思った。
個人的に会計の本がかなり積読状態だが、財務諸表関連の本は読むのを止めて売ります。キリがない。
自分はバイト先で売上や粗利の話をして、それを上げることを目標にしているが、ピーター・ドラッカーが利益はまぼろしと言っているので数値主義を改めたいと思いました。