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印象に残ったこと
経営者の素養として怖がり、臆病さは極めて重要。
会社経営者はバランスシートの現金、売掛金の数字がすぐに思い浮かばないと経営者失格。
最後にカギを握るのはキャッシュ(現金)。キャッシュに余裕があるならば、赤字を出していてもつぶれない。
技術が素晴らしいから製品が必ず売れるという発想は大きな間違い。
技術が素晴らしいことを裏付けるのはその技術で作った商品が市場で売れるという事実。
技術力は顧客のニーズに応えるものでなければ意味がない。製品がよくてもきちんとした財務戦略がなければ会社はつぶれる。そろばんを持たない経営者になってはいけない。
創業して間もない企業にとって大事なのはマーケティング。(何をどう売るか。)
マーケティングには資金の回収まで考えることが大切。すぐに売り上げが経つからといって回収状況が悪いところとは商売をしてはいけない。
様々な経験から教訓を導き出し、自分なりの原則、戦略を作っていく。その原則から外れると失敗につながったりする。
売上より利益、利益よりキャッシュというのが財務の基本。
売上を増やすことばかり考えると成長ではなく膨張になってしまう。
利益ばかり求めていると「開発費を資産に計上しよう」などとキャッシュが入ってこない利益を探そうとしてしまう。
重要なのはキャッシュが得られる利益を継続して出すこと。いくらで製造して、どういう価格で売れば採算がとれて利益が出るのかを考えるのが経営の基本。
価格を上げられないが、自分たちで決められる原価をいかに安くするかで利益が生まれ、キャッシュを確保するカギになる。
原価を気にせずバーゲンセールのようなことばかりやっているような会社はつぶれる。
赤字にならないように仕入れ原価を注意深く見なければならない。経費の無駄は1つは小さくても積み重なると収益を確実に圧迫する。
「お金でやって来る人はお金で去っていく」以前の職場の年収を下回っても来てくれる人でないとダメ。
売上高営業利益率10%以下は赤字としている。ある事業部門が8%の営業利益率だったとすれば2%の赤字ということになる。
大きな問題に直面すると驚くが、小さくして考えれば解決できる。1億円の赤字=月にすれば800万円、1日にすれば数十万円。
千切りのように小さく刻めば、必ず解決策が見つかる。最も大事にしているのは時価総額。経営で重視する数値に順番をつけるならば、一株当たり利益、利益、売上高。
1株当たり利益にPERを掛けたものが株価。
日本電産グループが今重視するのがキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)。この日数を減らすには原材料費の支払いを遅らせ、在庫を減らし、販売代金の回収を早める必要がある。
利益が好調でもCCCの日数が増えれば経営にひずみが出ている証拠。
創業時は自己資本率にこだわるな。借金が増えると自己資本率が低下すると考えて投資を抑えていたら企業は飛躍できない。
経営トップは経理が作った決算書で納得してはいけない。
利益が出ているのキャッシュが増えないなど疑問があったら原因を分析し、速やかに対策を取る。
表向きの業績はいいが、倉庫に行ったら無駄な在庫が積み上がっていたということにもなりかねない。売上や利益は操作できるが、キャッシュはそうはいかない。CCCは不正防止にも役立つ。
不正が起こるのは在庫と売掛金。
期末に無駄な在庫を積み上げていたり、売掛金が膨れ上がっていたら要注意。損益計算書ではまず人件費がどれだけかかっているか、開発費がどれくらい占めているのか分析する。
成長しているベンチャーでは販管費が少ないのが普通。そんなところにお金を使っているようではその会社は伸びない。
創業時に用意する資金は一般的には初年度の売上高の12分の1、すなわち月平均の売上高に相当する資本金が必要。
日本電産は永守会長の自己資金2000万円(貯蓄と株のキャピタルゲイン)でスタート。資金は金利が安い借りにくいところから借りる。創業間もない企業の融資交渉は断られることから始まると考えておいた方がいい。
接待で銀行員をゴルフに連れて行ったり、マージャンをしたりという習慣自体がおかしい。
ベンチャーキャピタルが乱立し、安易に資金を出す状況になるのはよくない。
融資は担保があるので借りる側は返さないといけないという緊張感がある。創業してしばらくは苦しいかもしれないが借り入れでやっていくのが賢明。一株当たり利益が大きくなり、純資産を上回る価格で株式を買ってもらえるようになった時に初めてベンチャーキャピタルを考えるべき。
手形の不渡りにあってから、月商の2か月分以上のキャッシュを持つことにした。
運が7割。これ以上やれることはないと努力をして初めて運が近づいてくる。
アポイントを取っているのに、客を平気で30分、1時間待たせる会社は要注意。
このような会社は何事につけて迅速に対応できない可能性がある。当然、お金の支払いに関してもルーズであることが多い。永守社長の経験上、社長の出社時間が遅い会社ほど取引先として危険。9000万円の不渡りを出した会社の社長の出勤時間は毎朝10時だった。
日本電産では1社の取引が全売上の20%を超えないようにしている。1社の取引比率が20%を超えそうになれば、全体の売り上げを伸ばすようにした。
M&Aは営業利益率が10%前後に達し、安定して利益が出せるようになってから動くのが望ましい。
M&Aの多くは失敗している。買収額が税引き前利益に支払利息や減価償却費を加えた金額(EBITDA)の10倍を超えるものには手を出さない。
M&Aの相手先のバランスシートはじっくり読む。PLは悪くても立て直せるが、バランスシートの修正には時間がかかる。
為替予約は一切やらない。
雑感
接待は無駄、経費も1円単位でチェックしていたという永守会長。
創業間もない頃は融資も認められず、不渡り9000万円が出た時は潰れる覚悟をしたそう。
ピーター・ドラッカーが「利益はまぼろし」と言うように、利益は数字合わせで作れる。
「企業は十分なキャッシュフローさえあれば利益が出なくとも、長い間なんとかやっていける」とも語っている。
黒字倒産があるようにキャッシュがやはり大事。