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【書評】働く人のための精神医学

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働く人のための精神医学

印象に残ったこと

  1. 愛着、発達、パーソナリティの各障害の土台部分をしっかり理解すると心の病にとどまらず、人間という存在を立体的に把握するのに役立つ。

  2. 愛着は心理学的な現象というよりも生物学的な現象。

  3. 愛着を生み出し維持し続けるメカニズムはオキシトシンというホルモンによって支えられている。オキシトシンが豊かに分泌されると、対人関係がスムーズになり、社会性が高くなり不安やストレスを感じにくくなる。

  4. 愛着が安定しているか否かの要因は遺伝要因が4分の1、養育環境要因が4分の3。

  5. いじめやハラスメントなど強い孤立を体験すると愛着にもダメージを与える。

  6. 発達心理学者のメアリー・エインズワースは安全基地とは安定した愛着の働きとした。

  7. 愛着スタイルは、安定型、不安定型に分けられ、不安定型は不安型(囚われ型)と回避型に分けられ、両者がオーバーラップした恐れ、回避型もある。

  8. 土台である愛着が不安定であることにより、さまざまな症状の連鎖が起きる。各診断をバラバラに並べても問題の本質は見えないが、愛着という観点で理解すると、愛着が不安定なまま育ったことがその後の困難を準備していたと考えられる。現在起きていることだけを見れば、~障害と診断がつくが、それはドミノ倒しの一番最後のドミノ牌が倒れた説明でしかない。

  9. 知的障害を伴わない軽症タイプの発達障害では安易に発達障害と診断する過剰診断が起きやすい。

  10. キンコーズの創業者ポール・オーファラは読字障害やADHDがあった。彼は判断、指示をしていたが、細かい単調業務はすべて人に任せた。

  11. ウィトゲンシュタイン自閉症スペクトラムだったと推定されている。

  12. ユニクロの柳井氏は高校時代、数学が苦手だった。オールラウンドな能力を持つ人が優れて有為な人材というわけではない。

  13. 自閉症スペクトラムとは自閉症より軽症だが、その傾向を持った状態のことで、広汎性発達障害という言い方もする。アスペルガー症候群は知能や言語的発達に問題がないものをいう。むしろ知能が優れているケースが多い。周囲の人となじんだり、歩調を合わせるのが苦手という社会性の課題と興味や行動のレパートリーが狭く、こだわりが強いという課題がある。
    興味や行動のこだわりは度が過ぎるほどで、思い通りにできないと本人にとってはストレスになり、時にはパニックを起こす。
    神経は過敏な傾向があり、緊張や不安を感じやすい。とくに物音やにおいに敏感なことが多い。
    このようなタイプの人は自分の特性や興味に合った領域を深め、それを専門技能や資格として通用するレベルまで高めることが社会で成功するための鍵になる。管理職や経営者として手腕を発揮する場合もある。

  14. 愛着と発達課題と合わさって最終的にできるのが人格。愛着や遺伝的に決定された気質もその人に反映され、その人特有の受け止め方(認知)や感じ方(感情)、振る舞い方(行動)となって表れる。

  15. 常識が通用しない事態に遭遇した時、相手がパーソナリティ障害(性格の著しい偏りのために自分自身だけでなく周囲も苦しむ状態で生活に重大な支障が生じるほど程度が強いもの)を抱えているというケースが多い。

  16. パーソナリティ障害はこころが傷つくような体験をきっかけに急激に性格の偏りが強まる場合もある。パーソナリティ障害の根本症状は幼い心の状態に陥っている。その状態には5つの基本症状がある。
    ①白か黒か両極端に考えてしまう。
    ②傷つきやすく、人との絆が不安定になりやすい。
    ③根底に自己否定や劣等感。
    ④自他の境目があいまいで、立場を混同しやすい。
    ⑤歪な自己愛を抱えている

  17. ゾイドパーソナリティ障害は社会的な関心が乏しく、親密な対人関係を避け、孤独を好み、世間的な価値観から超然としているタイプ。この特性は遺伝的要因がかなり関係している。近年見つかったDISC1遺伝子の変異は統合失調症やその近親者に多いが、この遺伝子変異がある人では人と接したりする社会的体験から喜びを感じにくい。この遺伝子変異は自閉症スペクトラムとも関連がある。

  18. 認知行動療法は知らず知らずのうちに認知(物事の受け止め方)や行動の偏りを生んでいる自動思考に気づき、それをもっと適応しやすいものに修正していく治療法。

  19. ストレスホルモンの正体は副腎皮質ホルモン。ストレスホルモンはストレスを受けた時に体を守るために放出されるホルモン。

  20. ストレスを感じた時に最初に反応するのが視床下部視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)というホルモン分泌され、それがすぐ近くの下垂体に到達すると、下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が放出される。ACTHが全身をめぐって副腎皮質にたどり着くと、副腎皮質ホルモンいわゆるステロイドホルモンが放出される。
    ステロイドは異物との戦いをやめさせる作用がある。一方で外敵から無防備にするのでステロイドを使い続けると細菌やカビに感染しやすくなる

  21. ストレス状況が長く続くと、海馬が萎縮し始める。

  22. ストレス反応でよく見られるのが適応障害。ストレスに慣れず、心の変調が現れ始める状態。ストレスから開放されればすぐにでも元気を回復することができる。

  23. 適応障害の克服には2つの方向がある。1つは不適応を起こしている環境の問題を解決したり、ストレス耐性を高めて不適応を克服する方向。もう1つは合わない環境からできるだけ離れて、その人に適した環境に移ることで、新たな環境での適応を図る。問題解決をする上で重要な要素は他の人に相談できるかどうか。問題解決が苦手な人ほど、自分で何とかしようとする。

  24. ストレスを小さくする上で大事なことは期待値を下げること。100点ではなく50点で満足する。みんなから評価されることを期待するより、自分を評価する人もいれば、評価しない人もいて当然だと思う。実際、優れた人ほど、風当たりも強く中傷も増える。

  25. ストレス耐性を高めるには切り替えを上手にすること。自分が躓いた問題に囚われた状態になって、絶えずそのことを考え続け、頭の中でその言葉や場面が堂々巡りを続けていることを反芻思考という。反芻思考に陥りやすい人はうつにもなりやすい。日頃から切り替えの訓練が必要で、有効なのは体を動かしたり、場所を移動すること。30分以上かかった方が切り替えにいい。瞑想したり、仮眠したりするとさらに切り替えは進む。

  26. 反芻思考に陥らない思考習慣を培うことも必要。同じことを考えそうになった時に「この事を考えてなにか役に立つだろうか?結果を変えることができるだろうか?」「考えても同じことならば考えるのやめよう」と自問し、ストップと言ったり、首を振ったりしてその考えを吹き飛ばす。この方法は思考停止法という認知行動療法の技法やその変法。

  27. 双極性障害で有効性が高い治療法は運動療法。気分や意欲のコントロールには神経細胞内のミトコンドリアの働きが関係していて、うつ状態ではミトコンドリアの働きが低下する。運動はミトコンドリアの働きを活性する。

  28. パニック障害では脈が早くなる、息が上がるといったことが生じても重大な身体的異変ではなく、運動負荷などによる自然な反応であると受け止めるように認知を修正する必要がある。

  29. パニック発作を防ぐテクニックとして有効なのがグラウンディングテクニック。発作の予兆を感じたら地面や床にしっかり足を踏ん張り、固くてしっかりしたものに掴まったり、身体を押し当てたりして安定したものにつながっている状態にする。同時に意識を掴まっているものの硬さや目に見える外の風景に向け、ゆっくりお腹で呼吸する。吐く時に時間をかける。

  30. ドトール創業者の鳥羽博道対人恐怖症赤面恐怖症に悩まされていた。鳥羽氏は一人で生きていかなければならない状況に陥ったことによって、病気を気にする暇もなく、とにかく目の前のことを夢中でやりこなさないといけなかった。このことが対人恐怖症を含めた不安障害などの神経症を克服する上で大事な点。症状を治そうとするのではなく、やらねばならないこと、やっていることに集中することに夢中になって取り組むことが神経症克服の極意。

  31. 顔が赤くなるとか人に変な目で見られないかといった心配に注意を奪われるよりも先に自分から積極的に行動することで自分のペースで物事を運べるので状況をコントロールしやすい。

  32. 強迫性障害はしないでいいとわかっている行動をしないといられなかったり(強迫行動)、考えても仕方がないとわかっていることを考えずにはいられない状態(強迫観念)。強迫性障害はストレスが高まった状況で発症したり、症状が悪化しやすい。

  33. 強迫観念を抱きやすい強迫性障害の人はきちんとしたしつけを受け、道徳観念が強く、過度に自分を縛ってしまう人に多い。親に支配されて育った人に多い。強迫性障害薬物療法だけでは改善が得られにくく、(認知)行動療法を併用すると非常に効果的

  34. ドーパミン系に効く代表的な物質が覚せい剤やコカイン。GABAに効くのはアルコールや抗不安薬睡眠薬ドーパミン系に直接効果がある物質は幻覚などを引き起こす危険があることから非合法になっている。ドーパミン系を直接刺激する物質の使用は禁止されているが、ドーパミン系を刺激する行為までは禁止されていない。ドーパミン系を刺激する行為の代表はギャンブル。

  35. 統合失調症とは脳での情報処理が活発になりすぎてオーバーフローを起こした状態。幻覚や妄想の症状は働かなくてもいいときにまで神経が働いていることによる。

  36. 脳の神経伝達経路で賦活的な働きを持つ伝達物質はドーパミングルタミン酸統合失調症ではこのいずれの経路で暴走が起きやすい。統合失調症では興奮を鎮める仕組みが弱く、頭の活動が高ぶりっぱなしになりやすい。

  37. 統合失調症の人は情報を読み取りすぎるため無関係なことを関係づけてしまったり、偶然の出来事に意味があるように思ってしまう。

  38. 統合失調症の人では注意力やワーキングメモリー(短期記憶)が低下している。統合失調症の前に勉強に集中できないなど認知機能障害が始まっていることがよくある。

  39. 妄想性障害は妄想を主たる症状とする精神障害で、統合失調症に比べると機能低下が少なく、社会適応もよい。あまり病気に見えないことも多く、普通に仕事ができたりする。妄想の内容も統合失調症の妄想が非現実的な内容に対して妄想性障害では現実にありうる内容であるのが特徴。

  40. 妄想に囚われるようになると、顔つきが固く尖ったようになり、表情も乏しくなることが多い。明るさや笑顔がなくなり、目つきがきつくなったと感じられる。

  41. メラトニンは夜が暗いと活発に分泌されるが、明るいと分泌が低下する。初潮など性的成熟が早くなっている要因として人口光の影響で夜が明るくなっていることも考えられる。

  42. レム睡眠以外の睡眠はノンレム睡眠と呼ばれ、睡眠の深さによって4段階に分けられ、ステージ3,4を徐波睡眠と呼ぶ。

  43. 徐波睡眠を取ってしまうと睡眠負債はリセットされてしまう。夜の寝付きをよくするには睡眠負債をある程度高くすることが必要。作者は読書入眠法といって枕元の明かりだけで眠気が来るまで本を読み、眠気で本を落としたら電気を消して寝る。

  44. 若いうちは性的活動が活発なので夕方から宵の口までは覚醒度が上がる。この仕組は本能的なので若い人は宵っ張りになりやすい。50代になると宵の口に元気になるという仕組みが働かなくなる。日が暮れると眠くなってしまう。

  45. 晴天のときの戸外の明るさは10万ルクス以上で、30分以上外に出れば、1万ルクスを1時間浴びる光療法と同じ効果が得られる。

  46. ビタミンB12は睡眠改善に効果があるが、通常のビタミン剤の含有量では足りず大量に服用する必要がある。

  47. 真か偽かという純粋科学の問題は現実とは違うイマジネーションの世界の話であり、現実には熱力学第二法則エントロピー増大の法則)以外不変の真理はあまり見つかっていない。

雑感

5.高校生の頃に強い孤立を体験したので人に対して攻撃的になった気がする。

9.最近、自称発達障害が増えている。発達障害だから子育てしなくていいと言い訳している親もいる。

13.自分はアスペルガー症候群にも当てはまっていると思う。

アスペルガーは管理職や経営者に向いているみたいだが、実際、俺は人の上に立つ人間だとマジで思っているw

15.常識が通用しない相手が現れたら、こいつはパーソナリティ障害なんだなと思うとイライラしなくなるかもしれない。

20.自分がよく処方してもらう痔の薬、フケの薬はステロイド剤。これを使い続けるから余計に悪化するのではないかと思った。

30.ドトール創業者の話だが、これは森田療法そのもの。

35~39.自分は統合失調症の傾向があると思う。

5年前から通っている精神科では妄想性障害と診断されている。