印象に残ったこと
適応障害は環境にうまく馴染めないことによって生じる心のトラブルで、うつや不安、意欲や自信の喪失、ケースによってはイライラして怒りっぽくなったり、嗜癖的な行動にのめり込むといった行動上の問題となって表れることも少なくない。
適応障害の段階ではまだ復元力があり、不適応を起こしている環境から離れたり、ストレスが減ると速やかに回復するのが大きな特徴。
適応障害は疾患というより環境にうまく居場所を見つけて、自分の存在価値を認めてもらうという課題のつまずきであり、心理社会的な障害。
GABAは神経細胞の興奮を抑える働きがあり、この働きが悪くても緊張や不安が強くなったり、不眠になりやすかったり、けいれん発作を起こしやすい要因になる。GABA系は神経細胞全般の興奮性に関係しているため、効きすぎると筋肉に力が入らなくなったり眠くなったりしやすく、酔っぱらっている状態になる。
オキシトシンは愛情ホルモン。さらに抗ストレス作用や抗不安作用がある。オキシトシンの働きがいい人では不安を感じにくく、うつにもなりにくい。
適応障害のきっかけとして多いのが転居、転勤などの生活環境の変化。また、対人関係のトラブルや孤立、死別なども重要な要因。
適応障害で起きているうつ状態をうつ病と同じように治療してしまうケースが多い。実際、うつとして医療機関を受診するケースの大半が適応障害。それなのにうつ病、双極性障害と診断され、抗うつ薬や抗精神病薬などを投与されるとますます身体がだるくなり、意欲も気分も沈むようになって本当の病人になってしまう。抗うつ薬はセロトニンなどを増やす働きがあるが、脳のレベルが正常な人にそうした薬物を投与すると鎮静がかかりすぎて、だるさや意欲低下が強まってしまう。抗精神病薬や気分安定薬は影響がもっと強く認知機能が低下する場合もある。
ストレスは抑えようとすればするほど増大する。抑圧された欲求が症状を作り出す。これを見つけたのがジグムント・フロイト。抑えこまれた欲求はストレスになる。
心が望む欲望とそれを許さない現実とのはざまの軋轢が苦しさを生むが、その苦しさから逃れるため人はその葛藤を抑圧してしまう。それが無意識のうちに症状として出てしまうのが神経症とフロイトは捉えた。
カウンセリング治療の重要な働きは、自分の感情を吐き出したり、考えを整理することで曖昧だった気持ちや事態を明確に意識化、言語化し、それによって扱いやすくすること。
問題解決が苦手な人ほど自分だけで何とかしようとする。逆に自分の弱みを見せて相談するのが苦手な人ほど適応障害を起こしやすい。
ストレスを乗り越える上で、もっとも重要なカギを握る究極の原理は「安全基地」を持つこと。
適応とは自我が快楽原則と現実原則の折り合いをつける作業。 快楽原則の中でフロイトが重視したのは性的な欲望。フロイトは性欲をもっとも本源的な欲望、生のエネルギーと考え、性欲に源を発するエネルギーをリビドと呼んだ。
アドラーは人間的の本源的な欲望を性的欲求よりも優越しようとする欲望と考えた。しかし、優越への欲求を全面に振りかざしたりすれば、社会生活がうまくいかなくなることは必定。そこでアドラーが重視したのが所属の願望。アドラーによる適応とは個人が優越しようとする欲求と、社会にその人にふさわしい所属の場を見つけるという課題の間で妥協すること。その場合に重要になるのが、共同体感覚。共同体感覚は自分の利益だけでなく、相手や仲間の利益を考える姿勢で、それを身につけることが個人の優越とその人らしい所属という両方の課題をうまく折り合わせ、適応をスムーズにする。
アドラーは軍医だった時に、戦争恐怖症になりやすい人や回復が遅い人は他人とのつながりや仲間意識が乏しい事に気づいた。人とのつながりや仲間意識がしっかりしている人ではPTSDになりにくく、なったとしても回復が早い。ただし、アドラーの理論では人とのつながりを持ちやすい人と持ちにくい人がいて、つながりを持ちにくい人はどうすればいいのかという疑問に答えていない。これに答えるのがストレスの感じ方や乗り越え方にみられる個人差を決定する要因である「愛着スタイル」
草原に住むプレーリーハタネズミは家族の強い絆で結ばれ、群れを形成して暮らす。一方で山地に住むサンガクハタネズミは絆をもたない。この差を生み出しているのがオキシトシンシステムの違い。プレーリーハタネズミにはオキシトシンの受容体が豊富なのに、サンガクハタネズミには受容体があまり存在しない。人の場合もオキシトシンシステムによって絆が支えられている。
扁桃体は恐怖や不安などのネガティブな情動の中枢で危険を感じたら回避行動を起こすことで命を守ろうとする。視床下部は自律神経の中枢。不安になったりストレスを感じると、呼吸が荒くなったり心拍数が増えるのは扁桃体などからの信号を受けた視床下部が興奮するから。
オキシトシン受容体が豊富な個体では同じようなストレスを受けても恐怖や不安といったネガティブな情動反応が抑えられ、自律神経系の反応も穏やかになりやすい。オキシトシン受容体が乏しいと、不安や恐れを過剰に感じやすく、自律神経系も過剰に興奮しやすい。
オキシトシン受容体の豊富さは遺伝子レベル以上に生まれた直後から乳幼児期の養育環境。人間の場合、1歳半までが愛着形成にとって非常に重要な臨界期なのでこの時期に安心と愛情をたっぷり与えられた子供ではオキシトシン受容体が豊富に育まれやすい。この時期にネグレクトや虐待を受けた子供ではオキシトシン受容体が少なく、オキシトシンの分泌も悪い。
アーロン・ベックという精神科医はうつ病患者を治療する中で彼らが実際以上に物事を悲観的に考えていることに気づいた。ベックは不適応の原因として受け止め方や思い込みの要素が大きいことを認識し、その部分に働きかける治療を行うようになった。それが今日、認知療法となっている。
人の認知の特性を認知スキーマといい、これがバランスよく柔軟なものであれば周囲にうまく適応しやすいが、極端に偏っていたり柔軟性を欠いていると摩擦を生じやすくなり、適応がうまくいかなくなる。
認知は自動的に行われるので自分の偏りに気づきにくい。自動的に行われる認知処理を自動思考という。自動思考の背後には偏った信念(思い込み)が存在している。「自分は無能で、どうせ失敗する」
認知療法では自動思考やその背後にある誤った信念を修正することで問題を改善し、適応しやすくする。認知の偏りは自覚と努力によって変えていける。
前頭前野の働きが悪いと、固執性が強まりやすい。固執性の強い傾向が見られるのは自閉症スペクトラム、強迫性障害、妄想性障害などが代表的。
固執性の高い人は環境が変わることに対して激しい抵抗を感じやすい。このタイプの人は外食する時に同じ席、同じ料理ばかり頼む。そうした適応戦略は逆に適応の幅を狭めるので、時には店を変えたり、注文の料理を変えたりして行動のパターンを変えることで適応力を活性化させる。
固執性と同居しやすいのが過敏性。音やニオイ、環境の変化といったことに過敏な傾向。過敏性も生物学的な要因が強い特性。
DISC-1(ディスクワン)遺伝子の変異を持つ人は人と一緒にいることを喜びとして感じられない。その結果、人と行動を共にすることに興味を示さず、孤立的に振る舞ったり、協調性を欠いたりしやすい。この変異を持っていると統合失調症や自閉症になるリスクが増大する。
自閉症スペクトラムは社会性の障害と固執性を特徴とする状態である。その中でも知能が正常で、言語的な発達に遅れがみられないものをアスペルガー症候群と呼ぶ。
遺伝的特性と環境因子が影響し合いながら、その人の考え方や行動のスタイルができあがる。それが人格。
もう起きてしまったことをくよくよと何度も考えてしまうことを精神医学で反芻思考という。反芻思考に陥りやすい人は、うつにもなりやすい。自覚と訓練で反芻思考はコントロールすることができる。否定的な体験への固執性を自覚しておくことがそこから脱出する助けとなる。囚われている人は、それが必然的な状態と思い込んでおり、そうなるのは相手がひどいことをしたからだと思いがちだが、それがすでに囚われの罠に陥っている。そこから開放されるには相手ではなく自分にかかっているということを理解すると事態は変わっていく。
反芻思考に陥った時、それを切り替える訓練を日頃からする。切替方法として体を動かしたり、場所を移動すること。瞑想したり、仮眠することも切り替えられる。
反芻思考に陥った時、「この事を考えて、何か役立つだろうか。何かプラスになるだろうか。結果を変えることができるだろうか。」「考えても同じことを考えるのをやめよう」と自問し、その考えを吹き払う。頭を振ってもいい。ストップと声に出しても良い。これらの方法は思考停止法という認知行動療法の技法や変法。
共感性や向社会性が低いと、些細なことも攻撃と受け止め、被害感を強く持つようになる。
明らかに使い物にならない部下というのもいるが、多くの場合、使い方に問題がある。ありがちな悪いパターンは2つある。
1つは部下に任せることができず、手出し口出しをしすぎて、部下のやる気や責任感をそいでしまうこと。
もう1つは部下に対する指導や管理が弱すぎること。自主性に任せているつもりが、部下は何をしていいかわからず、見当違いなことをしたり、何を言われないことをいいことに手抜きしたりして仕事にならないことがある。そのためには随時ミーティングをして、分担や責任を明確化し、進行状況を報告させ、必要な問題解決についての具体的方法やスケジュールを言わせる必要がある。厳しい手順を決めて指示されたことしかできない状況で仕事をやらせたグループと自分の裁量で仕事ができるグループを比較すると、前者の方が同じ時間働いてもストレスが大きく、過労、心身症を示しやすかった。これだけ守ってほしいという点を伝えた上で、後は本人の自主性を尊重し、良い点や努力している点を褒めるという戦略を基本にする。肝心な点が守られてない場合ややるべきことが果たせていない場合は個別に呼んで注意する。みんなの前で恥をかかせたり、怒鳴ったりすることは絶対にしない。
何でも話すことができる甘えられる相談相手が一人いるだけで、自殺のリスクは半分に減少すると言われる。大人になってその人の安全基地になるのは配偶者であることが多い。仕事のストレスを浴びた上に、私生活でも安全基地がないとストレスはたまる一方。
「でも」とすぐに言い訳をしてしまう人にとって、人生を変えるいい方法は武装解除法。誰かから何か気に食わないことを言われたら「でも」といわずに「私もそう思っていたんだ」と答えるだけでよい。それだけで対人関係や気分、意欲や生き方まで変わっていく。実際、これはうつの人を治療するのに使われる認知行動療法の技法の1つ。もう1つの方法は応答性を高めること。相手が求めてきたら応えること。
受動的なコーピング方法は認知療法、能動的なコーピングは解決志向アプローチ、動機づけ面接、ソーシャルスキルトレーニング、アサーション・トレーニングがある。
悲運や理不尽さを嘆いたり、周りの人や自分を責めたところで、傷口を広げてしまうだけなので起きたことをどう受け止め、どう対処するかが大事。
ストレスや逆境に強いプライドの持ち方は自分が最善と信じる行動を取ることにプライドを持つこと。
期待値を下げる=良いところ探しをする。どんな悪いことにも何かよい点があるはずだという視点で物事を見る習慣をつける。(例:この経験から何かを学ぶことができるはず。この経験で自分は鍛えられる。)これは幸福になる秘訣。
二流の営業マンは客に買わせようとするが、一流の営業マンは客が買いたくなるようにする。買わせようとすると、迷っている客ほど買いたくない気持ちを強める事も知っている。強引に買わせると後でトラブルになることも多い。
共感的に傾聴する方法としてリフレクティブリスニング(エコーイング(相槌)、リフレージング(オウム返し)、話し手が話したことを言い換えたり要約すること)がある。
人が変化する時、それに先立って変化しようという意思を語るようになる。言葉が変わると行動が変わる。
そうなれたならという淡い期待の段階から、そうなりたいという意志の段階、なんとしてでもそうなるという決意の段階、そうなるための具体的方法を考える段階へと意思表明は強まっていく。現状を変えようと意思を表明する言葉を動機づけ面接ではチェインジトークという。人生で人が迷うのは解決の仕方がわからないというよりもどういう解決にたどり着こうとしているのかが見えていないため。ゴールがはっきりしていないのに試行錯誤を繰り返したところで余計に迷うだけ。
原因の究明や解決方法よりもそれを解決してどうなりたいのかをイメージすることに力を注ぐ。
巨大な複雑系を扱う現実では解決法を考えて問題を解決するより正解を決めたら自然に解決法が決まるという方向で動いている。ゴールを明確にするためにどうなりたいのか、どうしたいのかという質問を随時繰り返す。現状は10段階でどれだけうまく行っているかを確認する。現状が3だったら10はどういう状態か、4の状態はどういう状態か尋ねる。ミラクル・クエスチョンは奇跡が起きて問題が解決してしまったらあなたはどう変わるか?と尋ねる。こうした質問をしていくと自分がどういう解決を望んでいるか明確になっていく。 どうなりたいのか?いまのあなたの達成可能なゴールは?その具体的な方法は?と自問する。
本田宗一郎はものづくりの天才だが、勉強が苦手で、経営も最初はどんぶり勘定だった。経理のプロの藤沢武夫と出会ってホンダは世界的な企業に成長した。
雑感
自分は適応障害にも当てはまっている。うつ状態は適応障害の結果だと思う。
通っている精神科医によると自分は適応障害には当てはまらないと言われた。
大学卒業あたりから精神科に通って薬を飲んでいたが、全く対人恐怖に効果はない。
自分は固執性と過敏性がかなり強い。前頭前野の働きが悪いんだろうな。
すき家に行く時に同じ料理、同じ席を選びますね。これから店を変えたり、注文や席を変えたりして行動のパターンを変えようと思う。
この本は認知行動療法の具体的な方法が紹介されていた。
今まで通っていたカウンセラーのスピリチュアルなセラピー(インナーチャイルドワーク、Somatic Experiencing、催眠療法、ブレインスポッティング)がマジでアホらしいと思えた。
最初からこういう人に指導してもらった方が症状も緩和したような気がする。
46はそのとおりだと思う。このブログではこれをやろうみたいなことを書いているが、実際に書くとなんだかんだでそれを実行することになる。
GABAの元はグルタミンなのでまたグルタミンを摂ろうかな。
あまり効果を実感できなかったんだよね。