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ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑さんのゲノムが語る生命像を読みました

ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑さんの「ゲノムが語る生命像」を読みました。

印象に残ったこと

  • 多くの生命科学がマウスなどの動物レベルを用いた研究を使うのは遺伝的に均一な動物を使うことによって個体差が限りなくゼロに近づくから。しかし、ヒトは各人が違うDNAを持っている。

  • ゲノムとは細胞が持つDNAの総体で細胞の遺伝情報のすべてを包含している。

  • セントラルドグマが意味することは獲得形質(例:スポーツ選手の強い肉体)は遺伝しないということの物質的基盤。もし獲得形質が遺伝するならば、タンパク質→RNA→DNAと情報の逆流が起こらねばならないから。

  • アフリカツメガエルの小腸の細胞の核を取り出し、これを卵の核を抜き取ったものに移し替えた。ほとんどの核移植胚はカエルにならなかったが、0.1%以下は生殖可能なカエルになった。分化の過程で遺伝子を失うことはなく、分化の過程で起きた様々な遺伝情報発現の変化は受精卵の中でふたたび元のプログラムに戻され、すべての細胞に分化する能力を獲得することができる。これはリプログラミングと呼ばれ、iPS細胞の作製原理。

  • 遺伝暗号はDNA上の4種類の塩基配列の並び方で決定される。

  • ヒトのゲノムは細胞1個当たり2mにもなる。ゲノムは父型、母型それぞれ1組ずつの合計2組の染色体からできている。ヒトは23対の染色体があるが、そのうち22対を常染色体と呼び、残る1対を性染色体と呼ぶ。

  • 我々の遺伝子はDNAとして細胞核の中に蓄えられている。DNA分子がそのままつめこまれているのではなく染色体という構造体の中に規則正しく織り込まれて存在している。

  • 糖はデオキシリボースという構造をしている。核酸に含まれる糖は5個の炭素からなっており、そのうち2番目の炭素に酸素が結合している場合をリボース、ないものをデオキシリボースと呼んでいる。リボースはRNAの構成成分。

  • ハイブリッド形成反応の際、外から加える既知の標識されたDNAをプローブ(探索子)と呼ぶ。

  • 遺伝暗号(コドン)は3塩基が1単位(トリプレット)となってアミノ酸に対応し、64通りの単語がすべて使われ、そのうち1個(ATGの配列)がタンパク質構造の始まり信号。一方、終了信号は3種類ある。遺伝暗号はmRNAに転写される。

  • 遺伝暗号が3塩基の枠組みで連続的に書かれているということは1個の塩基が欠失したり、挿入が起こったりするとタンパク質の構造全体に重大な変異が起きる。多くの発がん物質は遺伝暗号に直接、間接的に変化を及ぼす変異原物質。

  • 高等生物の遺伝子ではタンパク質に表現される領域(構造配列)の途中にまったくその機能と関係ないと思われる配列(介在配列)が挿入されている。介在配列はイントロン、構造配列はエクソンと呼ばれる。エクソンエクソンの間に取り込まれた周囲の塩基配列イントロン

  • 遺伝子とは1つの機能を持った遺伝情報の単位。1つの機能は一般的にタンパク質またはRNAの構造を決めること。遺伝子はエクソンイントロンから成り立っている。

  • DNA上に刻み込まれた遺伝情報は同じ核酸であるRNAにコピーされる。この時、DNAのコピーからタンパク質を作るのに不要なイントロンを除くためにスプライシングが起こり、mRNAが生じる。

  • DNAの二重鎖のうち、一方だけが意味のある情報を持っているので遺伝情報はDNAの一方の鎖を鋳型としてRNAへと写しかえられる。(転写)コピーをしながら遺伝情報としては無意味なイントロンを取り除き、エクソンだけをつなぎ合わせる編集が同時進行する。

  • RNAはDNAとほとんど変わらない構造をしている。違いはチミンの代わりにウラシルを使っていることとデオキシリボースではなく酸素が余分についたリボースであること。

  • 最初のコピーから完成されたmRNAになるためにはスプライシングに加えてRNAの頭にキャップをかぶせたり、その下流にアデニンを連続させたポリAをつけたりする必要がある。

  • リボソームはmRNAとアミノ酸つきtRNAを照らし合わせて、アミノ酸を暗号通りに並べてつなぎ合わせていく。

  • 1本のDNAは鋳型の二重鎖をほどきながら連続的に合成される。ところが逆方向の鎖の合成は二十鎖がほどけた領域で進行方向とは逆向きに(DNA合成酵素の進む方向に)短いDNAが合成される。この短い一時的に作られるDNAは名古屋大学分子生物学研究室にいた岡崎令治の名を取って岡崎フラグメントと呼ばれている。

  • 同じ両親から生まれたのに兄弟が違うのは持っているゲノムが違うから。

  • 両親から受け取った23対の染色体(2倍体)は生殖細胞ができる時いったん4倍体になった後、2回の減数分裂によって1倍体(23本の染色体)を持つ4個の精子(卵)に分配される。

  • 遺伝子(DNA)を何らかの運搬体(ベクター)に組み込み、微生物の中で増殖させてDNAを増やす。このようにして作られた均一の遺伝子を持つ核酸、細胞、個体をクローンと呼ぶ。大腸菌の場合、プラスミドと呼ばれる環状構造を持ったDNAベクター大腸菌に感染するウィルスであるファージをベクターとして使ったものが用いられる。

  • ガン原遺伝子の過剰発現はガンを引き起こしやすい。異常増殖を抑えるようなガン抑制遺伝子の機能の損傷はこれまたガンを引き起こす。

  • ガンの免疫療法は科学的根拠の薄いものがあり、承認されていないのに民間医療機関で横行していた。本庶さんが発見したのは免疫系を抑えるリンパ球レセプターPD-1に対する抗体を用いる免疫賦活化療法
    ヒト型抗PD-1抗体を用いた方法はPD-1の阻害により免疫寛容の成立を回避する。一方、ガンワクチンなどの抗原を投与しても免疫寛容が成立してしまう。

  • 脳の活動原理は遺伝子の多様化機構が動くのではなく基本的に電気信号の複雑な回路の形成によって行われる。

  • 記憶物質はたぶん存在せず、回路の形成やシナプス伝達の強弱が記憶を支配すると考えられる。

  • 1950年代、数万人の統合失調症患者にロボトミーという前頭葉切除が行われた。その結果、多くの人がやる気を失い、外界に対して無関心となり、集中力を欠いたり、計画的に物事を行うことが困難になった。このような臨床結果から物事を総合的に判断し、理解する中枢が前頭葉にあることが明らかになった。

  • 感覚器の情報を受けることで判断し、行動に移す1次中枢の上にさらに上位の統合中枢があるらしいということはアッシャー症候群という遺伝病の研究から明らかになった。この患者は視覚と聴覚を失っていくが、最後に残った嗅覚は動物並みに鋭くなる。

  • 脳の高次機能が個々の遺伝子の発現というよりは胎生期から発達期までにかけて形成される神経細胞の作り出す電気回路に依存していることは明らかなので脳の中の電気的回路を網羅的に記載していくという方法も再び注目されている。

  • シナプスにおける情報伝達は化学物質の放出、拡散および受容体との結合によって行われる。神経系の制御はこの化学物質の種類に依存。神経細胞内の電気信号に比べて伝達速度が遅い。

  • 神経ペプチドの生理活性は多彩。VIPと呼ばれる28個のアミノ酸からなるポリペプチドはホルモンとして血流増加など血管系に作用したり、代謝系にも影響を及ぼす。脳内でも血流の調節を行い、神経活動を調整する。VIPは脊髄の腰仙髄レベルの神経細胞にも存在し、男性性器の勃起にも強く関係していることが示唆されている。

  • 神経線維を切断して再生現象を観察すると神経線維の先端はいろいろな方向に試行錯誤的に枝を伸ばし、目的とする神経細胞にたどりついた枝だけが太く発育していくことが知られている。

  • 生命体は常にきちっと決まった一本の道を始めからまっしぐらに歩むのではなく、一定の許容幅と複数の可能性を持っている。このことが生命体にとってもっとも必要な生命の安定性を保証する。

  • ヒトの遺伝情報の総体(ゲノム)の中にも偽遺伝子や無意味だと思われる領域が多数存在する。しかし、この部分も遺伝子の再構成や転移その他によって少なくとも部分的には役に立つ遺伝子に変わっていく可能性がなきにしもあらず。

  • 科学的研究が応用を考えた研究に重点化すると、予想される成果のみを追い求めることになる。科学の重要な発見は常識を打ち破ることであるから思いがけない発見(セレンディピティ)による成果の方が社会的インパクトは大きい。

  • ヒトのインシュリン大腸菌の中で作られるということほど、我々の生命の基本的な仕組みが微生物と同じであることを強く示す事実はない。

  • 疫学的な研究によれば生涯被曝が100mmシーベルト以下では発ガンリスクが増加するという証拠はない。一方、マスコミをにぎわした研究者からはわずかな放射線であっても細胞に影響があり、染色体への異常等を引き起こすという見解もあったがこれも正しい。ただし、染色体が傷つくことと発ガンをもたらすということには重大な差異がある。

  • 米国産トウモロコシはほとんどが組み換えDNA種子で作られており、アメリカ人は数十年大量に消費しているが健康被害が報告されたことはない。

  • 植物は個体復元能力が1個の細胞にあるのである遺伝情報を導入すれば新しい性質の植物ができる。

  • 微生物による発酵技術を用いてアルコール類のみならずエタンやメタンなどの炭化水素の生産を可能にし、これを用いたプラスチックを作り出すグリーンケミストリーという分野の研究開発が進んでいる。

  • 知覚神経や細胞表面レセプターのように極めて濃度が低い化学物質を検知して反応するバイオセンサーの利用が考えられる。

  • 本能的快感といった欲望充足型幸福感は飽和するが、不安感の不在という幸福感は麻痺しない。欲望充足型の幸福感だけに頼るのではなく、不安除去型の幸福感により重点を移して不安感受回路の閾値を上げるようにして幸福感を味わうことが生物学的に合理的である。

  • ヒトはどのようにあるべきかという観念的思考に基づいた議論だけでは現実問題の対処に限界を実感することが多い。人の生きざまを考える時は人がどうあるべきかという文化的社会的な面からの議論と同時に、そもそも生物としてのヒトの生きる仕組み、知覚、認識、行動の原理はどのようなものであるかという科学的な理解を共有することなしには十分な議論ができなくなる。

  • 憎悪は生物が他者と競争して生き残るために必要であったからこそヒトの遺伝子に刻み込まれていると考えられる。憎悪は競争心と表裏一体。これをどのように制御すべきか科学的根拠に基づいた叡智により、憎悪を乗り越えた調和的共存への展望が開ける。このように考えると生物学は理系・文系を問わず現代人に必須の教養である。

雑感

本庶さんは76歳なのに若いよね。

この本は分子生物学の基本を紹介している本。分子生物学の基本なんだろうが、個人的には読むのに時間がかかった・・・。

ノーベル医学生理学賞として功績が認められた免疫賦活化療法はほんの数行紹介されているだけだった。(図もあった。)

免疫療法は科学的根拠のないものが横行していることも指摘していた。

自分も科学的根拠のない治療には怒りを覚えている。お金と人生の無駄遣いになるだけだと思う。

また、本庶さんは遺伝子組み換えなどバイオテクノロジーに対して結構積極的だと思った。

ゲノム、遺伝子、DNA、染色体とややこしいと思うが、

大堀講義ナマ中継 分子生物学 (わかりすぎてヤバい!)

大堀講義ナマ中継 分子生物学 (わかりすぎてヤバい!)

この本によると、ゲノムはその個体が生きるのに必要な染色体のセットと説明されている。

遺伝子、DNA、染色体のイメージは以下のように説明されていた。

遺伝子とDNAと染色体
遺伝子は20種類のアミノ酸をどういう順番で結合させるかというタンパク質の設計図。DNAは遺伝子が集まったもの。染色体はDNAを箱にしまったものというイメージ。

統合失調症の記述が出てきたが、自分もやはり前頭葉の機能が衰えているんだと思う。集中力がない、外界に無関心になってるし。

感覚→判断→行動という中枢の上に上位中枢があるという記述があったが、これはまさに動物脳(大脳辺縁系)、人間脳(大脳新皮質)という話と同じだろう。

統合失調症の人は人間脳が発達してないので動物的な行動を制御することができない。

最後の方で生物学は現代人にとって必須の教養と述べていた。アメリカでは文系理系を問わず生物学は必修らしい。

個人的に生きる指針として生物学を学ぶといいかなと思った。

上述のように不安感受回路の閾値を上げて幸福感を味わうのが生物学的に合理的とあるが、リラックスは蓄えることができると言われている。

わけのわからないスピリチュアルに依存するよりこういった生物学から学ぶことでストレスなどにも対処できる気がする。

他にも生命体は常にきちっと決まった一本の道を始めからまっしぐらに歩むのではなく、一定の許容幅と複数の可能性を持っている、遺伝子は無駄な部分があるという真理を知っていれば自分の人生の指針にもなるだろう。

ノーベル物理学賞を受賞した天野さんもブルーバックスで本を出しているのでブルーバックスを読んで損はないと思う。

ブルーバックスのとある著者がノーベル賞を受賞する可能性があるだろう。

最近、お金にならないこと(英語や資格)を学んでも意味がないとyoutuberやブロガーがのたまっていたので自分もそうだよなと思っていたが、生物学関係のブルーバックスは無駄に思えても読んでいこうと思った。

自分は健康系の本を読んでいたが、それは応用的な要素があった。今後は生物学の基本のような本を読みたい。

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