印象に残ったこと
クックマートは東三河(愛知県東部)から浜松(静岡県西部)に展開しているローカル食品スーパー。
投資ファンドマーキュリアインベストメントとの戦略資本業務提携。
小売業の中で食品スーパーが少し特殊で最も寡占化が進んでいない業態。
コンビニやドラッグストアのように全国チェーンになりきらず、大手と言ってもエリアを限定する企業がほとんど。魚は東三河では圧倒的にマグロを食べるのに対し、浜松はびっくりするぐらいカツオ。
味噌は東三河が赤味噌中心、浜松は信州の合わせか白味噌中心。
お雑煮は東三河が花かつおをたっぷりかけるのに対して浜松は青のりをたくさんかける。この合理化できない魔境にコンサルタントとか 外部の頭のいい人がやってきて無理に合理化できる、計測できると思うとおかしなことになる。
実際、EC王者のAmazonが生鮮に乗り出しても他の領域とは違ってあまりうまくいっていないのを筆頭に、ファーストリテイリング(ユニクロ)が挑戦するも、これはまずいとすぐに撤退。楠木建先生のストーリーとしての競争戦略を読んで、一番肝だと思ったのはその会社の独自のコンセプトがあるかどうかが大事。
コンセプトというのは本質的な顧客価値の定義であり、誰に何を売っているのか と問いに答えること。自分がで発注した商品であれば、売れなかった場合、気づきや反省に繋がる。
それが次の発注精度を高め、商売人として成長していく。
しかし本部が全てを決めている場合、その学習機会が失われている。
その場合、「本部が悪い 」「商品部が分かってない」という風になる。やる前からわかることは多い。
無駄な動きは少ない方がいい。
やらなくていいことをやらないことは生産性に最も直結する非常に大事なこと。
とりあえずやってみましょうというのは筋の悪いコンサルタントが言うこと。部外者であるコンサルタントはその会社の戦略ストーリーを理解しないまま、往々にして一般論、ベストプラクティス(最適な案)を持ってきてしまう。
それに従ってやっていくとやらなくていいことが増えて悲惨なことになる。コンサルタントが経営者の代わりをしようとしてはいけないし、経営者がコンサルタントに経営を任せようとしてもいけない。
短期利益ばかりを求めると、長期利益はついてこない。利益の先食いになってしまう。
楠木建先生風に言うと、長期的利益が持続的に生み出されていればだいたい何とかなる。
たまに延々と状況を変えないタイプの人がいますが、そんなに嫌ならさっさと場所を変えればいいのに場所を変えたくない、変えられないなら自分が変わればいいのにと思う。
そのどちらも嫌で他人を変えようとして、自分は何も変えたくないというのは単純にその人が未熟で子供なだけ。
人生は有限なので切り替えは早い方がいい。幸福というのは足るを知り、結局線引きの問題。
どこで良しとするか分をわきまえるか。楠木建先生のストーリーとしての競争戦略によると競争戦略には大きく分けてポジショニング戦略、組織戦略がある。
前者は何をやり、何をやらないかという選択と集中の考え方で、組織戦略は優れたやり方について練り上げていく、時間をかけてじっくりという考え方。私の組織戦略はとにかく場づくり。場を作ったら徹底して任せる。
ただ、放置とは違う。コンセプトはしっかり握った上で 任せる。
そして情報共有、コミュニケーションして、絶えずフィードバックがあるようにする。現在のビジネス、小売、食品スーパーの世界は何でもデータ分析できると思いすぎではないか。
全てを科学の視点で見ようとしすぎではないか。
結果、可視化できるデータばかり見てデータにならないものを見落としてないか。ファンドは一般論 、ベストプラクティクスを持ってくることになる。 一般論を繰り出し続けると、他社との違いはなくなり、同質化し、長期的には儲からなくなる。
結局のところ、経営は何を極大するべきなのか?答えは長期利益。by楠木建
チラシに掲載された商品と価格は本部による指令。もし現場でその商品を 価格では売れないと考えても チラシとして出してしまっている以上、従わなければいけない。
しかし、それでは現場は維持管理だけになる。
商売の本来の楽しさである仕入れや値付けの自由がすべて奪われ、現場の方が 顧客ニーズについて正しい情報を持っていて、的確な判断ができるはずなのに指示書に従わなくてはならない。
現場では売りたくないものを売らなくてはならないという葛藤が生じる。
雑感
浜松に最近増えてきているなと思っていたが、クックマートが豊橋の企業とは知らなかった。
投資ファンドとも組んでいて驚いた。
地域によって売れるものが違うせいか全国チェーンで成り立つスーパーは少ないらしく、スーパーは寡占化が進んでいないそうだ。
浜松の俺はカツオの刺身だし、味噌はあわせ、好きなのは白みそ。お雑煮は東三河と同じ花かつおですw ていうか青のりなんてかけるか?
アマゾンやユニクロも生鮮食品では失敗しているほど難しいみたい。
著者はいわゆる全国一律のチェーンストア理論を否定している。
俺も小売りでバイトをしたことがあるが、商品部というのが幅を利かせていて、現場の需要を無視して大量に商品を送ってくる。
結局、売れ残って廃棄やら返品、値下げをする羽目になる。
商品部はバカなんじゃないか、SDGsと言うんじゃねえよ!と思っていたが、これがいわゆるチェーンストア理論で規模の経済なんだろう。
たまに来るお偉いさんやコンサルが現場をかき乱すのはよくあること。
日本の労働生産性が低いのはこれで、やらなくていいことをやらされる羽目になる。
何でも数値化できると思っている人がネット社会になって多くなっていそうだが、世の中は単純系ではなく複雑系で成り立っている。
可視化できない変数も現実世界にはあるので、著者のように科学的でなく文系的な発想も必要。
この本の最後に経営学者の楠木建氏の解説が書かれていて、この本の要約になっている。
自分が行くのはイオン、マックスバリュ、ベイシア、遠鉄ストア、杏林堂でクックマートは行ったことがないので行ってみようかな。